妹たちと悪友

2024.3.3

アリは、晴也と大学時代に知り合った親友だ。大学を卒業して就職をすると間もなく、故郷であるイスラエル支社へ異動になってしまった。

晴也は、マリブカントリークラブのシーサイドコースを見下ろしながら、アリとの再会に思いを寄せていると、後ろから妹の凛花の声がした。
「お兄ちゃん、おはよう。」
「おう、凛花、今朝は珍しく早いね。」
「今から屋久島に行ってくるわ。10時の便が取れたからすぐに出発。」
「今度は何しに行くの?」
「帰ってきてからゆっくり話すわ、行ってきます!」
凛花は嵐のように去っていった。

晴也は、普段はおっとりしているが、思い立つと猪突猛進なところがある妹を、心配ではあるが一途で微笑ましいと思っている。島にこもって写真を撮るのだろうか、はたまた絵を描くのか、どちらにしても自分の世界に没頭するだろうから半月は帰ってこないだろう、やれやれという思いで凛花の後ろ姿を見送った。

今日のラウンドは、幼馴染で悪友の大地も誘っている。ワインの販売会社を経営していて世界中のワインに精通している中々のやり手だ。学生時代は、バイト代が貯まると世界各地のワイナリーを回るという根っからのワイン愛好家だ。

アリがイスラエルで大規模な葡萄畑を作ることになった話を聞き、引き合わせることにした。新しい葡萄畑を作ることは、時間と労力を要する大変なプロセスだが、何か協力できることがあるかも知れないと思ったのだ。いや、ただ話を聞くだけもいいだろう。

銀杏並木とは別にある私道から、黄色いポルシェがやってきて玄関の前でピタリと停まった。中から大地が出てくると、我が家のような足取りで玄関に入り屋上まで上がってきた。

「相変わらず我が家のように入ってきたな。」
「ここは俺の第2の家だよ。昔は居候させてもらって、数えきれないほど晴也とゴルフをしたしね。」

一番下の妹、芽以が屋上まで駆け付けてきた。
「大地、おはよう、車が見えた。」
居候時代、5才年下の芽以は大地に懐いて、釣りや海によく連れて行ったもらった。そんな活発な芽以を大地もかわいがってくれて、芽以にとって二人目の兄のような存在だった。

「芽以、元気だった?相変わらず機械いじりばっかりかい?」
「そうよ、それが私のホビー&ビジネス。今、ゴルフボールを追跡・捕獲する発明品を作っているんだ。」
「ということは、それを使えばボールを無くさないで済むんだね。そいつはありがたいなあ」
「でも、池ポチャのボールを捕まえるのは難しいの。只今、試行錯誤中。」
芽以は、しばらく大地と会話した後、発明品の開発に取り掛かるために、1階にある工房へと降りて行った。