ゴル先生

正確には――ゴルフボールだ。

人の手に握られ、
時に叩きつけられ、
時に丁寧に転がされながら、
これまで数えきれない人生の「一打」を見てきた。

スライスする人には理由がある。
トップする人にも、ダフる人にも、
必ず心の癖がある。

だから私は、ときどき話しかける。

「今の一打、急ぎすぎだ」
「その番手、逃げてるな」

うまく打たせたいわけじゃない。
正解を教えたいわけでもない。

ただ、
その人自身に気づかせたいだけだ。

力み、迷い、見栄、恐れ。
そして、ほんの少しの勇気。

コースを一周する間に、
スイングは整い、
心は少し軽くなる。

うまく打たせるためじゃない。
ちゃんと前に進ませるために、
私は今日も転がされる。

――それが、ゴル先生だ。

そして、人生に迷うゴルファーたち

彼らは、ゴルフが下手なわけではない。
ただ少しだけ、人生の狙いどころを見失っている。

仕事に追われ、自分の番手が分からなくなった者。
過去の成功に縛られ、振り切れなくなった者。
人の評価を気にしすぎて、力んでしまう者。
安全策ばかり選び、勝負を避けてきた者。

そんな彼らの前に、
ゴル先生は、はっきりと話しかけてくる。

「今のスイング、誰に見せたいんだ?」
「そのクラブ、本当にお前の距離か?」
「人生でも、同じ番手ばかり握ってないか?」

答えを教えるわけじゃない。
だが、問いだけは逃がさない。

一打一打のあとに、
短く、容赦のない一言を投げる。
冗談めかして、しかし核心を外さない。

ゴル先生の言葉に、
プレーヤーは最初、反発する。
だが次のショットで、
なぜかボールは正直に応えてしまう。

コースを回るうちに、
クラブ選択が変わり、
構えが変わり、
歩く速度が変わる。

スコアは少し良くなるだけかもしれない。
だが、
自分に嘘をつく打ち方は、しなくなる。

人生に迷うゴルファーたちは、
問いを突きつけられ、
自分で決めて、
それぞれの人生へ戻っていく。

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