west9番 Par5 右グリーン470y。
気が付くとあっという間に最終ホールだ。
ここは、左ドックレッグのロングで、右サイドにOBが続く。
左の奥に見える鉄塔に向かって打っていくというのが鉄則だ。
お嬢は、ティーショットに立つと鉄塔を見つめた。
お嬢の場合、鉄塔に向かって打つと山の中腹に落ちてしまうため、山裾とフェアウェイ中央の間が狙い目である。
「最後のホール、トリ以下ならハーフで50が切れる!」とドライバーを思いっきり振った。
気合とは裏腹に、ボールは左サイドの山に向かって飛んで行った。
「しまった、OBだ、」とお嬢がつぶやくと、カコーンという木に当たる音とともに、ボールが跳ね返ってきてフェアウェイの真ん中に落ちた。
「ラッキー!木の神様が打ち返してくれたよ!」となおさんは叫んだ。
今日は、双子の姉、なおさんと回っている。
2人は、110切りを目指してがんばっていたが、いつの間にか100切を目指すようになっていた。なおさんも、このホールでダボ以下なら50が切れる。
2人とも2打目まではフェアウェイキープで何とか進んだ。
グリーン手前の左右には、バンカーが待ち受けている。
さらにグリーンは横に広いが奥行がないため、正確な距離感が必要。
お嬢の3打目は、グリーンまで200ヤードもあったので、とりあえずUTで少しでもグリーンに近づけて、4打目のアプローチに賭けることにした。
なおさんの3打目は、残り150ヤード。バンカーを気にしながらもFWでグリーン目指して思いっきり打つことにした。
「今日、二人揃って100切れたらふぐ食べに行こう!どちらか一人の場合は馬刺し、どっちもダメだったら養老の滝ね。」となおさんが提案した。
2人は、美味しそうなお店を見つけると、仕事帰りに待ち合わせをして、食事とお酒を楽しんで、千鳥足で家まで帰ったものだった。
離れて暮らすようになってから、飲みに行く機会が減ってしまい、せめてゴルフの後はと必ず2人で飲み会を開いている。
そこで、近況報告などをしながら美味しいものを食べて酔っ払うのが2人の楽しみでもある。
お嬢の3打目は、やや右に飛んでラフに落ちたが、次が狙えそうな場所だ。上手くグリーンに乗せて、久しぶりにふぐが食べたいな、でも馬刺しもありだな、と思いながら、なおさんの3打目を見守りつつ、フェアウェイを歩き始めた。