west8番 Par4 139y。

「今日はかなり奥に切ってあるね。高低差入れても140yはあるよ。」
元野球部の大ちゃんが張りきった声で言った。
バットの素振りで鍛えた野球部はクラブ使いも上手い。
7番アイアンを構えると、「ためて、ためて、解放ー」と叫びながら素振りを繰り返した。

グリーン左の手間は池のOBで、チョロしたら終わり。
右サイドはバンカーと谷底になっている。かなり高い打ち上げで、落ちたらは這い上がるのに苦労する地獄のような谷底。

「どうして練習通りに真っ直ぐ打てないんだろう」
お嬢は素振りをしながら大ちゃんに言うと、
「バカみたいに力が入ってるんだよ。力、抜いて、抜いて」と答えた。

大ちゃんは、バッターボックスに立つようにクラブを目標に掲げてティーショットに立つと、止まってるボールを打つのは楽勝と言わんばかりに、あっという間にボールを打った。
ボールは気持ちのいい音を立てて、勢いよく目標の方向へと飛び出した。
「ナイスショット」これが野球だったらホームランだな、と思いながらお嬢は声を上げた。

続いてお嬢は、「地獄の谷間はいきたくない」と思いながらティーショットに立った。
「地獄の方は見んな、目標目掛けて、大きなスイングで!」
と大ちゃんが声をかけてくれた。
そのお陰で、お嬢は我に返り、練習通りのスイングで打ち込んだ。
ボールはグリーンに落ちて、1/3程度のところで止まった。
「とりあえず、地獄へ引っ張りこまれずに済んだよ、ありがとう」
お礼をいうと、「縦長の傾斜の強いグリーンだから、気合いれて打たなきゃ」と言いながらお嬢は、カートに乗り込んだ。