west7番 Par4 252y。

お嬢は、7番のティーショットに立って眉を寄せた。
グリーン手前にある大きく深いバンカーは、巨大なくじらの口のようだ。
このくじらバンカーに何度苦しめられたことか。

1打目のドライバーは、左サイドのバンカーと谷間を避けたい気持ちが強く出てしまうのか大抵スライスになってしまう。
すると2打目が、斜めの難しいラインになってしまい、くじらバンカーに落ちるか、オーバーしてしまうこと多い。
このくじらバンカーに怯むことなくグリーンに向かってショットを打てるようになった時こそ、バンカー恐怖症から卒業できるとお嬢は思っている。

一緒に回っている銀行員のみよちゃんは、職業柄かコースを読んで無理せず確実に回るのが得意なタイプ。
「左はバンカーと谷間が怖いけど、2打目のことを考えるとやっぱりフェアウェイ中央かやや左に打てるといいよね。」と言いながらUTを手にしていた。いつも通りドライバーを持っているお嬢に向かって、
「グリーンまで252yだよ。ドライバーよりUTで確実な方向に飛ばして次にグリーンを狙った方がよくない?」とサラリ。

なるほど、女性でもUTありなのか、とお嬢は唸り、クラブをUTに取り替えた。案の定、狙い通り二人ともフェアウェイ中央にボールが落ちた。
お嬢は残り100y。打ち上げなので、9番で打つことにした。

みよちゃんは120y残った。
「私は、80y先のバンカー手前に落として、次にピンを狙うね。」と宣言した。がむしゃらにグリーンを狙いに行かないみよちゃんに、またしてもお嬢は唸った。

「私も、50、50で刻んだ方が確実かな」とみよちゃんに助け舟を求めると、「あなたの距離ならチャレンジしなさい。」とピシャリ。

お嬢は、その通りだと思いながら9番アイアンを振りかざし、バンカー越えろ!と祈りながらボールの行先を見つめ続けた。