west5番 Par3 130y。

急な打ち上げホールが終わって一息つくと、次は5番、打ち下ろしのショートホールへと向かった。
お嬢と元職場の先輩せっちゃんは大きなグリーンを見下ろした。
「また、難しい顔してるよ。もっと楽しもうよ!」
と厳しい顔をしているせっちゃんに声をかけた。

彼女は、4月の辞令で人事部の次長に昇格したのだ。
それに伴い、月に1回は、接待やコンペでコースを回ることになるそうで、今のうちに練習しておきたいとお嬢を誘った。遊びではなく仕事の延長線上でゴルフをするということが頭から離れないらしい。

グリーンは横長に広いため、多少左右にぶれても大丈夫そうにみえるが、奥行きが短くてアンジュレーションがきついため、思った以上に手強い。
お嬢とせっちゃんは、右ギリギリに切ってあるピンを見下ろし、バンカーやOBを避けるため、グリーン中央とピンの間を狙って打つことにした。

せっちゃんからのティーショット。
グリーンの中央にボールが落ちて、そのまま右奥のエプロンまで転がった。
「せっちゃん、ナイスオン!」努めて明るくお嬢は言った。

続いてお嬢が、9番アイアンを振った。
ボールは高く上がり過ぎたのかグリーンに届かず右側のバンカーに落下し、
目玉になってしまった。お嬢は、「やっちゃった」と叫んだ。

バンカーに入り、スタンスを広くとってどっしりと構えた。
ピンまで20yヤード、高く短く打ちたいと思い、ゆっくりなスイングで手前の砂へとヘッドを滑らせたが、砂の中に深く埋まったボールを出すことは出来なかった。

せっちゃんがいるグリーン奥からはバンカーの様子が見えない。
お嬢の「あれ」「やだ」「今度こそ」という声は聞こえてくるが、ボールは出てこず、心配になってきた。結局、お嬢は、5回叩いてやっとボールを出すことができた。
「お待たせしちゃいました!」お嬢は5回も叩いてガックリしているはずなのに、汗を垂らしながらも清々しく言った。

せっちゃんはそんなお嬢の姿を見て、スポーツマンとしてもっとゴルフを楽しみながら挑まなくては同伴者にも申し訳ないな、と思い、お嬢に「ナイスファイト」と笑顔で返した。