再会

晴也たちがゴルフ場のロビーに着くと、日焼けしたアリが真っ白の歯を見せながら両手を広げてやってきた。
「ヘーイ、晴也」
「何て久しぶりなんだ、アリ!故郷での暮らしはすっかり慣れたかい?」
2人は抱き合いながら久しぶりの再会を喜んだ。

アリに大地を紹介した後、3人はシーサイドコースの1番ホールへと歩き出した。

コースを回りながら、アリは今回の葡萄畑プロジェクトの話をした。
「内戦が終わって、安全保障制度が憲法に新しく組み込まれた。武装集団の取り締まりも国境を超えて出来るようになりさらに強化された。ついにイスラエル全土に平和な時代がやってきたんだ。今や、国ぐるみで、荒れ果てた街にSDGsな商業活動を築こうとやっきになっている。我が社もその一環で大規模ワイナリーを作るプロジェクトを起ち上げたんだ。イスラエルは元々荒野が多いから広い土地はたくさんあるし、何よりもイスラエル人はワインが大好きなんだ。

内戦が激しかったこともあってイスラエルワインは海外にはあまり出回っていない。そこで、ワインを大体的に輸出できたら、経済の活性化にもつながるし、イスラエルワインを外国に知ってもらえるいいチャンスにもなる。

シャンパーニュ地方のシャルドネの苗を1万本、内戦時に援助活動をしてくれた近隣国からカベルネやメルロー、シャルドネの苗を3万本買い付けた。1年前から耕し始めた土地に、今年の春、苗を植えるんだ。収穫は、4、5年後。

その間に、ワイナリーの設備を整えて、醸造、熟成、樽詰、さらに樽熟成、瓶内熟成ができるようにしたい。ワインが出来上がるまでは軽く見積もっても6年はかかるが、このワイナリーが出来上がれば、大規模で持続可能なワイン造りの環境と経済発展が手に入る。日本の企業にも機械設備のオファーを出す予定だよ、円安が続いているから悪い話じゃない。」

熱を込めたアリの話に聞き入りながら、3人は9番ホールまでたどりついた。

アリの話に心を打たれた大地は、
「なんて素晴らしいプロジェクトなんだ、ワインに携わる身としてその計画に一石投じたい。」
と言うとアリの手を力強く握りしめた。

ヨーロッパ諸国へ足を運ぶ機会が多い大地は、内戦や中東との戦いで破壊されたイスラエルの街や、余儀のない避難で疲れ切った市民の姿を見るたびに、同じヨーロッパなのにどうしてこうも違うのかと、心を痛めてきた。しかしついに、辛い時代の幕は閉じ、平和な時代の幕開けの時がやってきたのだと、喜びをかみしめた。

「さて、このホールで前半はラストだよ。その前にビールで乾杯といこう。」
晴也はそう言うと、芽以に連絡を入れた。しばらくすると空から機械音が鳴り響いた。缶ビールが6本入ったクーラーボックスをドローンが運んできてくれたのだ。
「さすが、芽以ちゃん。」
大地は大笑いしながらクーラーボックスを開けてキンキンに冷えたビールを2人に手渡した。

ほろ酔いのおかげか、最終ホールは3人ともドライバーを軽快に響かせて、青空へと勢いよくボールを飛ばした。